私たちを取り巻く社会背景
1997年以降のデフレを機に日本国内においてうつ病が急増し、2008年には100万人を超え、10年間で2.4倍の増加を認めています。(厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部 精神・障害保健課調べ)
うつ病に関しては、受診していない人が多いことも考えられ、数値はもっと高いことが予想されます。
ちょうど同時期において、不登校の子どもの数も年々増加しており(文科省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」より)、いじめの問題とともに、親の頭を悩ます問題となっております。
これらの事象の原因としては様々なことが考えられますが、この頃から一般に多く認知されてきた「自己肯定感」という言葉と関連があるとみて、メンタルヘルス業界だけでなく、行政においても様々な分析を元に、取り組みが行われつつあります。
自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り拓ひらく子供を育む教育の実現に向けた、学校、家庭、地域の教育力の向上(第十次提言参考資料)
この自己肯定感の低さは、子供の問題やうつ、虐待、DVといったことだけでなく、私たちの日常の行動や考え方一つ一つに影響してきます。
自己肯定感が低いと
- 自分に自信がない
- 相手の顔色が気になる
- 人の言うことに左右される
- 人の意見を素直に聞けない
- ほめられても信じられない
- 人に優しくできない
- いつも恋愛ががうまくいかない
- パートナーが優しくしてくれない
- つまらない人と思われていないかと心配になる
- 失敗が怖くて行動に移せない
- どうせ私なんか…と思ってしまう
- 人とうまく付き合えない
- 自分だけ孤立しているような気がする
というような、普段の生活に密着したところに現れます。
国立青少年教育振興機構が2015年に実施した、日本、アメリカ、中国、韓国の4か国の高校生を対象とした調査によると、「自分はダメな人間だと思う」と答えた日本の高校生が、4か国の中で最も多いという結果でした。
日本の子供たちの自己肯定感が低い現状について資料4(文部科学省提出資料)
そもそも自己肯定感とは何なのか?
自己肯定感とは「自分を肯定すること」=「自分にOKを出すこと」、つまり、
「今の自分でいいんだ」
「今の自分は充分に価値があるんだ」
「私は私だからいいんだ」
と思えることです。
よく、「ネガティブはよくない」と言われることがありますが、ネガティブな部分もあって今の自分ならば、それも含め「OK」と思えることが、「自己肯定感が高い」ということなのです。
自己肯定感を辞書で引くと
「自分のあり方を積極的に評価できる感情、自らの価値や存在意義を肯定できる感情などを意味する語。 自己否定の感情と対をなす感情とされる。」
「自己肯定感は円滑なコミュニケーションや人間関係の構築などに大きな影響があるとされる。」(実用日本語表現辞典より)
とあります。
これを見ると、どうでしょう?
え?でも私、そんな風に育ってきてないし・・・と思う方も少なくないのではないでしょうか?
そう、日本はそもそも自己肯定感が高くなりにくい文化と言えます。
日本の文化は「謙遜」の文化、「協調」の文化だからです。
その中で、親とのかかわりが子供に影響を与える場面も少なくありません。
賞を取って「すごいですね!」と言われても
「いえいえ、そんな…たまたまですよ。」
自分の子供が「かわいいわね」と褒められても
「そんなことないのよ。家ではお行儀悪いし、言うこときかないんだから~。」
と、せっかく褒めてもらったことを素直に受け取らず、親が謙遜する様子を子供は見ています。
自分から「うちの子ほんとダメでねぇ!」などという親もたくさんいます。
逆に、褒められてそのまま受け止めて喜んでいると、「調子に乗ってる」と言われたり、妬まれたりなんていうこともあったりするようですし、「謙遜」≒「自己否定」=「美徳」という風潮は、なかなか自己肯定感を上げるという環境ではないことがうかがえます。
親子の会話の中でも、
「親の言うことを聞きなさい」
「どうしてみんなと同じにできないの?」
「どうしてそんなこともわからないの?」などと言われることも、自己肯定感を下げる原因となります。
「○○ちゃんは、ママの言うことがちゃんとわかって偉いわね」という言葉も、一見子供を受け入れているようですが、「親の言うことを聞くから偉い」ということでは、同じと言えます。
親の自己肯定感も低い
では、なぜ親はそのような行動や言動をするのかというと、やはり親も自己肯定感が低いからなのです。
みんなと同じでないと不安だったり、子供が思いがけないことをすると、それを受け止める自信がなかったり、子どもの味方になって他人と戦う勇気がなかったり、誰かに何か言われないようにという気持ちが親にあるのですね。
子供は親の笑顔が大好きですし、親が笑っていると安心なのです。
親が怒っていたり、泣いていたり、落ち込んでいたりすると、自分のせいではないかと思います。親が笑ってくれるように、お利口でいようとか、心配かけるようなことを言わないでおこうと思い、親の前で無理に笑っていたりします。
そして親が喜ぶことをしよう、褒めてもらおうとするので、自分のやりたいこと、思っていることを我慢していたりします。
自分はもっとのびのびしたくても、親が細かくキチキチしていれば、ちゃんとそれに合わせてきてくれたりするのですね。
人間は生まれてきた瞬間は、自己肯定感マックスの状態なのです。
親に認めてもらいたい、褒めてもらいたいと思っている子供が、親から「それじゃダメ」「あなたはダメ」「もっと上手に」「なんでできないの」と言われ、現状を受け入れてもらえないと、子供の自己肯定感はだんだん下がってしまいます。
なので、私たち親は、子供をそのまんま受け止め笑顔でいたいと思うのです。
そのために、まず親が「今の自分でOK」と思えるように、自己肯定感を上げていく必要があるのです。
これから私たちにできること
うつやいじめ、虐待などが社会問題となってきている今、この自己肯定感を上げることが重要だという声が高まってきています。
先にご紹介した、子供達の意識の現状を見ても、70%以上の高校生が「自分はダメな人間だと思うことがある」、44.1%が「自分は役に立たないと強く感じる」と回答しているというのは、親世代の私たちにとって胸が痛む限りです。
私たちがそういう子供たちを育ててきた、そして私たちも親からそうやって育てられてきたのです。
今、自己肯定感を高めるために、取り組みがされているとはいえ、まだまだ机上の空論的な部分があることは否定できません。指導する側もまた自己肯定感が低いのですから。
まずは、親世代である私たちが自己肯定感を上げ、元気を取り戻し、笑顔になることで、周囲が変わっていくのだと信じ、私たちも活動していきたいと思っています。
「幸せ呼び込む幸絵文字」には、そのツールがあります。机上の空論ではなく、実際に自己肯定感をアップさせ人生を変えて行っている様子を目の当たりにしています。
これを少しでも多くの方に広めていけるよう、今後も邁進してまいります。